骨組み 球体関節(概要)

真鍮や鉄などの金属素材を使って関節を作る方法です。 動きの精密さ・耐久性の高さ・各関節ごとにネジを使って固さを調節できるのが大きな特徴で、 ワイヤーアーマチュアのような”もどり”がほとんどなく動きの精度が高いので、より緻密な動きをつけることが可能です。

という高性能な骨組みですが、問題もいくつかあります。まず最初に、ワイヤーアーマチュアのような、どこからでも、どの方向にも動かせる。というものではないので、関節の位置と向きを考えて人形を設計しないといけません。
また、球体関節を自作するには金属の加工が必要なので旋盤やボール盤などの工作機械が必要になり、 使用する球の大きさや素材、それを押さえる板の厚み、穴の径なども、いろいろと試す必要があります。しっかりとした接合と精度の高い工作が出来ないと、撮影中に故障したり動きにムラが出て動かしずらい人形になってしまいます。プロの現場では関節を作る専門の技師がいるぐらい知識と経験が必要なものなので、自作をする場合は、それだけの時間と根気が必要になります。
あと、球体関節の人形はアニメーターにも高い技術が要求されます。まず、金属部品を多用しているのでワイヤーアーマチュアの数倍は重くなり、重心の取り方がシビアになります。また、ワイヤーアーマチュアと違って球体関節は動く方向が決まっているので、人形の外側に隠れて見えない関節の向きを常に把握しながら動かす必要があります。
このように球体関節の人形を作って、それを動かすには大きなハードルがいくつかありますが、根気よく続けて経験を積めばクオリティの高いものが出来ると思います。


関節の種類

金属を使った関節にはいくつか種類があるので紹介したいと思います。
ボールジョイント(シングル)
金属製のボールを2枚の金属板ではさんで作る方法です。球体関節は一般的にはこの構造を指します。
この方法だと一つの関節で『回転』と『屈折』の2つの動きが可能になります。(角度に限界がありますが左右にもある程度は動かせます)
工作の難易度は高いですが、自由度が高い関節を作ることが出来ます。しかし、ボールに傷がついてしまったりボールを固定する板の工作精度が低いと、1方向にだけ動かそうとしても横にぶれてしまうことがあるので製作には注意が必要です。

ボールジョイント(ダブル)
2枚の金属板で3つのボールを挟む形です。可動範囲が広く、ひねりもできるので、シングルよりもより広範囲に動かすことが可能です。

スプリットジョイント
簡単にいえば『ちょうつがい』を作る方法です。動く方向が1つしかないのでボールジョイントよりも工作は容易です。
しかし、ボールジョイントと同じ動きをさせようとすると『回転』と『屈折』それぞれの関節が必要になり複雑な構造になるため、人形のデザイン上、使用できる箇所が限定されます。


工具

球体関節を作るために必要な工具を紹介します。
ボール盤
小型の卓上型のものであれば十分だと思います。音と振動が大きいので周辺の環境に気をつけましょう。
部品を固定する万力も合わせて用意しておく必要があります。

金のこぎり
金属板などを切断する際に必要です。多少大きくてもまっすぐに切れるものを使いましょう。

金やすり
切断面や細かい部分の形を整えるのに必要です。数種類の形状のものを用意しておくと便利だと思います。

タップ
ねじ穴を掘るのに必要です。ドリルのように先が交換出来て数種類のねじ穴を作ることが出来ます。

小型バーナー または 半田ごて
部品をハンダ付けする際に必要です。半田ごてでも使用できます。

バーナー
鉄の素材を加熱する際に使います。

鋳物の器
鉄の素材を加熱する際に使います。写真はたこ焼きの器ですが鋳物であればなんでも構いません。

それでは次から、いくつか難易度に分けて球体関節の作り方を紹介したいと思います。


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